王家の風日 (文春文庫)



王家の風日 (文春文庫)

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『王家の風日』

小説としてよりも、古代中国の在り方、特に祭祀などについて分かり易く解説されており、“人”について考えさせられる意義深い内容だと思います。
滅亡する側から見た商周革命

中国歴代王朝の中で最も長く続いた商の滅亡を商王朝側からの視点で描いた作品。

若く才気あふれる受王(紂王)の登場で未曾有の繁栄を迎えようとした商は、妲己を正婦とした時から一転して衰亡に向かい、新興国・周によって600年の歴史に終止符をうたれることになる。
『時代の変化(神霊の時代⇒人間の時代)が商よりも周を求めた。』『開明的な受王は神政王朝のトップにありながら諸侯に人治国家のような忠誠を求めた。それでいて牧野の戦いに至るまで卜占を中心とする神政王朝の運営から脱却できなかった。』商王朝があっけなく滅んだ原因は種々あろうが、最も大きかったのは受王が名臣を活用できなかったことだろう。(このあたりは項羽と共通するところがある)
比干・箕子・微子といった名臣を誅殺あるいは幽閉し自ら王朝を弱体化させた受王が、太公望をはじめとする異族をも積極的に登用した文王、武王に勝てるはずがない。商王朝を滅ぼしたのは他でもない、自らの能力を恃むあまり他人の言に耳を傾けなかった受王の傲慢さであろう。
タイムトリップ

久々に読む宮城谷作品。

古代中国の世界に惹きこまれました。
漢字の力

難しい漢字を駆使する著者の作品の中でも、とりわけ難解な漢字が頻出する、一連の中国歴史小説群の最初期の作品です。でも心配はいりません。いつの間にかストーリーの面白さに引き込まれ、難解な漢字も、たとえそれが読めなくても、その字の形が意味を語ってくれるようになる(もちろん前後の文脈も参考にしますが)から不思議です。英語の原文を読むときに、わからない単語が出てきても一々辞書をひかずに読むような感覚でこの作品に接すればよいと思います。今から10年ほど前に、私が著者の作品で一番最初に手にとった読んだ本ですが、殷周革命というとんでもない古代を舞台にして、よくこんな魅力的な小説を書けるな、とびっくりさせられました。以後、著者の中国歴史小説は欠かさず読んでいます。(最近の作品になるほど、難解な漢字の使用頻度は減ってきますが。)
文字を創りだした王朝への敬い

漢字への興味、嗜好がこの作品の基点になっているとは思えない程の「読み易さ」が特徴です。 伝説的な夏王朝を除けば、最古の王朝として実在した商(殷)王朝の末期が、実に解りやすい物語として描かれている。
破滅を予感させる苛烈な王であっても、聡明であるが故の苦悩を理解できる宰相箕子のまなざしは、そのまま作者の商王朝への敬いと感じました。 後に書かれた「太公望」での独創的躍動感は少ないが、冷静に読み進められる古代中国史への入口です。



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